昭和浪漫、蠍団

これもヘヴ＆ヘルを差し置いて予習用に聴き込み再開ｗ

CD / Scorpions / Humanity Hour I

アグレッシヴな前作で往年の元気を復活させたスコピが、今度は「あの」
デズモンド・チャイルドを共同プロデューサに迎えたと訊いた時、
ジャンルにこだわらず、ボニー・タイラー、ボン・ジョヴィ、エアロスミス、
キッスらに楽曲を提供して成功へと導いた名コンポーザとのコラボレーション
で「質を保証された作品」になることを約束されたと同時に、どっちかと
いうと前作の勢いを踏襲してほしい願う自分がいたのも事実。

だから１回目聞いた限りでは、「ああ、こんなもんなんだろね、いいことは
いいんだけど。。フックが足りないってゆーか。。。」てのが正直な感想
だった。以前「ピュア・インスティンクト」アルバムからデヴィッド・フォスター
（元エア・サプライで、俺が大学時代かなり傾倒した映画音楽家としての
側面も持つ）がプロデュースしたシングルを出したりしたが、あんな感じ
でプロデューサ色のほうが強いかな？と。

でも、２回目以降。。。
御歳５９歳のクラウス・マイネの澄みわたる美しい声は依然衰えを知らず、
両脇を固めるルドルフ・シェンカー兄ぃとマテイアス・ヤプスの絶妙なコンビ
ネーションも「伝統芸」の域に近い。彼らがドラマチックに唄い上げ、奏でる
メロディアスな楽曲のオンパレードに、多分２－３回聴けばメロディが耳に
残って離れなくなること必至で、俺も当然そのいわゆる「デズモンド・マジック」
に引きこまれてしまった。それでいて、スコーピオンズがデビューから脈々と
伝え続ける「哀愁」という核心部分は失われてはいないんだから、やっぱ
共作の妙だわ。

２曲目なんか「サヴェージ・アミューズメント」アルバムの"Rhythm Of Love"
っぽく聴こえるのがかなり嬉しい。俺がリアルタイムで彼らを聴くようになった
のがあの作品だから。"Wind Of Changes"や"Send Me An Angel"を含む
大成功作「クレイジー・ワールド」に通じるような"Your Last Song"もあって、
まさに全世界が「ＨＲ／ＨＭバブル」だったあの頃を、リアルタイムで駆け
巡ったファンならどの曲もすんなり受けとめられると思う。

スコピのジャケットはいつも斬新で不思議なんだが、今回のアンドロイド
の女性がフィーチャされ、タイトルと相まって、なんか「ブレード・ランナー」
を彷彿させるかのような壮大なＳＦ的コンセプト・アルバムっぽくも思える。
実際はオープニングとラストが関連性を秘めてるだけで、そこまで内容的
には昇華されてはない印象だが、これとて８０年代を彷彿させる目的なの
かもしれない。

奇をてらうことなく、８０年代という彼らが最も成功していた時代の雰囲気・
楽曲の質を、今に新たな形で再現した完璧な作品。見事としかいいよう
がない。しかも３０年以上にわたって一線で活躍する彼らにとっては余裕
で生み出したようにすら思えるんだよね。

だからこそ、この最強アルバムを携えての来日公演がたった１回なのが
ホント悔しいわ（苦笑）。と、同時に、この１０月はロニー・ジェイムズ・ディオ、
クラウス・マイネという「至高のヴォーカリスト（年齢的にも、爆）」のパフォ
ーマンスが両方見れてしまうという現実に思わず身震いしてしまう。
なんて幸せな国、日本なんでしょ？