一頃から女性がフロントマン(あ、ウーマンか)を務めるバンドが一躍脚光を浴びることが多くなった。
アーチ・エネミーのアンジェラ・ゴソウや海外のシンフォニー・メタルの面々といった海外だけでなく、キャバ風ドレスに身を包み「嬢メタル」という言葉を生んだアルディアスや、元タカラジェンヌだったアカネさんをフィーチャーするシンフォニー・メタル・バンド、リヴ・ムーン等々、特に国内においてはアイドルものというジャンルとクロスオーヴァーするそのマーケットの旨味のせいか、次々と素人をプロの世界へと引っ張り出す有様。
まぁ、綺麗なおねいさんには鼻の下伸ばす俺にもオスの一面はありますがw ただ、殊音楽に関しては、女性だからとかルックスのインパクトとかでバンドを好きになるってことは皆無なわけで、特に実力至上とするメタルというジャンルにおいては絶対あり得なかった。そして、その頂点に立ち続けてるSHOW-YAという絶対神(いや女神w)の存在があるから、その牙城が崩れ落ちることもない。
と思ってる俺の前に、文字通り「彗星のごとく現れた」シンティアというバンド。
ツイッターのおすすめでよく目にしてたが、NAON NO YAONに出場とのことでよくよく調べると、結成してから1年そこそこにもかかわらず2枚のアルバムを出している。とりあえず予習という意味でアマでMP3でも買えた最新作「レディ・メイド」を買って聴いてみる。
Many formats / Cyntia / Lady Made
あとはリード・トラックとなるこのPVも。
何度も観聴きするうちに、この人たち(もしくはブレーン)はホントよくSHOW-YAを研究していると感心し、脅威すら感じる。これなんか"私は嵐"そのものやん。メタルチックながらあくまで「歌モノ」としての筋を通し、各メンバーのプレイの仕方・立ち位置として魅せる術はSHOW-YAの面々のソレをお手本にしてちゃんとモノにしている、てか唄ものメタルというもの自然にこういう形になるということを判ってる。それが判らないSHOW-YAファンはぶっちゃけジツはこの人達ほどSHOW-YAをよく見てないとも言える(苦笑)。
そして何よりもヴォーカルの投げ放つ言葉が情熱的すぎ。
常々、歌は2番の歌詞に必殺の殺し文句があればもう無条件にその曲は神曲になると考えてる。たとえば"私は嵐"には「女はガラスの仮面で本当の横顔を隠してる、男は心のどこかに錆びた夢を抱えてる」というフレーズにぐっとくる。UFOの"Doctor Doctor"なんかもそう。この曲では「あなたの物語のすべてのページ、上書き保存させて」と来たもんだ!男は「名前をつけて保存」して事ある毎に思い出に浸るしょーもない生き物で、女は「上書き保存」して前の恋をころっと忘れる薄情な生き物だというのが持論なので(猛爆)、このフレーズを歌に織り込んだ、このサキという女性の想いはなかなかのものですよ(この曲だけ外部のライターと共作なので本人から湧き出た言葉か知らんが)。
この後、デビュー・アルバム「エンドレス・ワールド」も聴くことになるが、あっちは1曲除いて外部ライターで占められてるのでなんかほんとアイドル歌謡って感じで、聴いててこっ恥ずかしくてあまり聴く気にならない(ちょうどSHOW-YAの歌謡ロック時代みたいに)。それに比べると全曲作詞で自分の言葉でしっかりとした歌声だからこちらの心にすんなり届いてくる。唱法自体も成長のあとがみてとれるわな。
そのサキの歌を前面にしつつ、ハードで濃密な音で後押しするバック陣。どの楽曲もよく練られてる。ハードだけどキャッチーで、一発で覚えられるメロディ。それもまたSHOW-YAを手本とした「歌謡メタル」に近い。
アルバムを聴く限りはホントにバンドの本領を発揮して説得力のある「唄ものメタル」を追及した、凄い力作・傑作だと思う。SHOW-YAでいうところの「グラマー」みたいで、俺へのインパクト大、まさにディープ・インパクトですわ。あとの問題はバンドとしての実力だ。これで実際のライヴがガタガタだったらガックシだしな。
で、そのNAON NO YAONで、2曲というわずかな出番ながらもその堂々としたパフォーマンスで確かな手ごたえを感じたことは以前書いた。ただ、旧作からのメタリックな2曲では彼女たちを評価できない。やはり最新作からの曲を観ないことには話にならないってことで、次は海外のバンド、キャメロットのオープニング・アクトに抜擢という状況でどう自分たちを魅せることができるか?が観てみたくなり、彼らの公演へ急遽参戦することに(これが真の理由w)。
で、彼女たちの出番に興味ない人が多いのか、整理番号で千人相当だろう順番でも余裕で3列目。ギターのユイから離れてしまうが空いてるほうがいいので左側へ。
ステージを見ると、キャメロットのセットがセッティング済みの上で、前方を使わせてもらっているということもあるのか、奇しくもキーボードが左、ドラムが右のまさにSHOW-YA的配置。ちょっとゾクゾクっときた♪
そして客電が消え、多分オリジナルなのか、"Out in the Fields"を彷彿させるBGが流れる中、PVと同じ衣装に身を包んだ彼女たちが登場。ドラムのカノコは長いスカートというか腰巻でちゃんと叩けるのかよ?と少々不安w
そして1曲目は待ってました、「深愛」!あくまで丁寧語でこちらを煽る。「声を下さい、行きますよ、ハイ!」って♪ 曲が始まると可愛い女から大人の女に豹変、歌いっぷりの良さが気持ちいい。声の伸びが半端ない。キーボードのアヤノのコーラスもクール。演奏は実に安定してて、このくらいのライヴハウスで聴くには充分の迫力。ギターのユイも、自分の身長と大差ないフライングV(爆)を上手に操って見かけの微笑ましさとはギャップあるかっこいいソロを決める。
大役を「おおせつかまつった(そこまで丁寧でなくても。。。てか間違ってね?w)」ことに緊張してるが、お客さんが温かく見守ってくれてることに感謝し(実際はそれほどでもなく、彼女たちのファンが散らばってるのが盛り上がってただけだが)、続けて"I Will"へ。アルバム2曲目の、(SHOW-YAの)"孤独の迷宮(ラビリンス)"タイプの男性詞の曲。若干不安定なヴォーカル・ラインだったがかっこいい。曲中、ドラム、アズのベース、ギター、キーボードの短いソロを回してメンバー紹介するところなんていっぱしでしびれるじゃないっすか。そもそもキャリアの長く、教則ヴィデオも出してるユイとカノコが動いて結成された、バンドというよりはプロジェクト的な成り立ちを経て出来たユニットなので、誰もがプロフェッショナルな演奏レベルの持ち主だ。
そして、アルバムの最後を〆る、大作で最も情念的な曲、"睡蓮と蝶"。まさか今回これが聴けるとは思えなかったんで狂喜。この歌詞なんて、読んでると官能かつ、女の怖さとか感じるww http://www.uta-net.com/song/143654/ しかも曲はヴァース->コーラス->ヴァース->コーラス->ブリッジ->ソロ->コーラス->リフレインと、ごく自然な流れな中、韻をほとんど踏むことなく散文的自由さでその音符の中にありたけの言葉数を詰め込んでる、ヴォーカル曲としては非常に難しい曲なんだが、難なく歌いこなしてる、てか語りかけてくる。しかも裸足で(そりゃ関係ないか)。ジンジン来る、すげーよ、この人。俺は年下だろうが、尊敬できる女性には「さん」付けする主義なんだが(たとえば仲里依紗を仲さんとか)以降サキさんと呼ばせていただきたい♪
そして残りの時間を自慢のファスト・チューン"Through the Fire and the Desire"と"Run to the Future"で畳み込む。タオルを持っている人に回すよう促すが、ほとんどなし。俺の左側の奴が振り回すんだが、俺の顔すれすれなんでこえーよ(汗)。ごめん、俺はSHOW-YAの「流星少女」でも絶対にタオル回さない主義で通してるのでできないんだ。でも「できなきゃ拳回してー」とおっしゃったのでそれはもう真剣に振り回しましたわさ。この頃には俺も声出して掛け声に参加して楽しんだ♪こうしてジャスト30分という短い役目を終えた。ほとんどのキャメロット・ファンには響かない結果だったかもだが、俺はウォーミングアップできたし、彼女たちのアウェーでの健闘は賞賛してあげたい。がんばったね。シンティアのメタルな部分を凝縮した濃厚な30分で、このおじさんはキミたちの面倒を一生みることに決めたから(オイオイ)。
唯一難点があるとしたら、サキさんはその持てる声量をフルに出し切ってコントロールできてない感(字余りならぬ音余り。番場蛮のノーコン投球的な、え、わからない?)は否めないんだが、これは経験を積めば身についてくるものだと思うし、こういう歌詞が書ける人だからきっとその言霊をもっと上手に伝える術を得るだろうから(番場蛮のハイジャンプ魔球的な、もうええって)あまり気にしてない。むしろ、このまっすぐさとか潔さって、人としてもっとも素敵に思える美点だと思う。
28/05/2013 Tokyo Shibuya O-EAST Cyntia setlists
深愛エゴイズム
I Will
睡蓮と蝶
Through the Fire and the Desire
Run to the Future
ここまで来たらいよいよ次はフルレンスのライヴだ。その日がいつになるのか?気が気でない毎日を送ってる(爆)。
20年、俺の前に現れなかったSHOW-YAのフォロワーが、今ここにいる。
バンドの成り立ちを考えると今後の音楽の方向性とか、レーベルの打ち出し方とか、将来に一抹の不安も隠せないけど(CDのオマケにビキニトップって何よ。。。失笑)、バンドが続くかぎりは(苦笑)その動向に注目していきたい。
「この想いを繋いでいこう、声の限り歌うと誓うから」
その言葉を信じて。その言葉どおりにこの原石が磨かれた宝石に化けたら。。。SHOW-YA最大のライヴァルになる日が来るかもしれない。