King Of The Blues

ライブ!ライブ!ライブ!

俺にとってB.B.のCDは集めることが目的であって、特に1枚1枚を聴きこむといった「通」タイプの人間ではない。むしろライブにこそ重きを置く。パッケージングされた製品からは見えてこないものを求めて。現在見逃すと二度と過ごすことができなくなるかもしれない時間を共有したいがために。そしてこれが10年というタームの中では異常とも言えるべきライブ数に通ったある男のつぶやきである(このレビューのノリ、気にいらなかったら許してちょ)。


1999年 3月26日 ハウス・オブ・ブルーズ、ラスベガス USA (インターネットライブ)

 行ったわけぢゃないが、初めてのインターネットライブ体験はとっても興奮するものだった(日本時間で27日15時より。いや、ヂツはコレ書いてる段階でまだ最期の曲がオンエア中なのだ)。あれから早くも2ヶ月。御大はとても元気そうだ。よく声も出てる。心残りだったもの、不安が解消して、安心した。感動的なことにセットリストが日本でものと違ってた。当然ボーカル有りの曲が増えているわけで、もし風邪を引いてなかったらこういうセットリストだったのか、馴染みの曲で綴るアメリカ仕様なのかはわからんが。で、やってくれちゃいました、"How Blue You Can Get" !!!。もう涙もん。当たり前だが、本国ではMCたっぷりで笑かそうとゴキゲンに喋りまくり。「う、向うまで行って観たくなってしまった」!"Thrill Is Gone"(エンディングのインプロバイズが長かった!), "Blues Boys tune", "Rock Me Baby" は言うまでもなく最上のプレイ。まるまる2時間で彼のすべてが−「私達が現在手に入れられる最高のもの」ーが共有できたような気がする、ネットという世界の上で。ああ、エアチェック(というのか?)できなかったのが悔しい!

セットリスト(http://www.hob.com/にて放送 )

  1. Let The Good Times Roll
  2. Why I Thing The Blues (Instrumental)
  3. I'll Survive
  4. Bad Case Of Love
  5. Darlin' You Know I Love You (Instrumental)
  6. Paying The Cost To Be The Boss
  7. The Thrill Is Gone
  8. Since I met You Baby
  9. Never Make A Move Too Soon
  10. Blues Boys Tune (Instrumental)
  11. Instrumental Jam incl. Whole Lotta Love, When The Saints Go Marchin' In etc.
  12. How Blue You Can Get
  13. Please Accept My Love
  14. Rock Me Baby - Shake It Up And Go

1999年 ブルーノート ツアー in 東京

 2月1日
 97年5月、(俺の中では「伝説」となっている)「雨の日比谷野音」以来のB.B.だ。去年見逃した分を取り戻すぞ(爆。支払う金が半端ぢゃないって)。
 東京公演直前になってちょっと心配だったのが、日本に蔓延しているインフルエンザのことだ。特に今年のはどんな元気者もかかってしまうということは、この10年、食中毒以外ではぶっ倒れたことのない上司が長く煩っていることで証明している。俺も1月入ってすぐひいたので今は大丈夫、うつす心配はない。でも、もしB.B.がかかっちまったら....ちなみに今年のインフルエンザによる死亡者は75歳以上が80%を越えていたり、老人ホームで死者が続出していることは新聞等で報道されていることだ。何事もないことを祈る。
 ブルーノートは移転以来始めてだ。会場としては3倍以上の広さになった。関係ないが俺は音楽以外1つだけここで楽しみにしてたものがある。前々回のツアーの時、ここで飲んだ生ギネスである。今回も連日飲めるということで楽しみにしてたが、残念なことに、というか腹立たしいことに、今週はハイネケンウィークということで置いてないらしい。ヒジョ〜に哀しい。これがあればすべてにおいて「ハレの日」続きだったのに。
 さて、バンドが登場してウォーミングアップのインスト2曲。でもこれまでの曲ではなかった。いつから変わったんだろう?今回はトニー・コールマン(パーカッショニスト)が不参加なのに気づく。尤も、あの狭いステージにドラムセット2個はキツイよな(とはいうものの97年のもっと狭かった頃には押し込めてたが)。マイケル・ドースター(ベース)は4弦のフェンダージャズ。これまで5弦か6弦の重々しいヤツだった。なんか音が軽くなって、よい意味で心地いい。97年以降人事異動のあったホーン・セクション。ウォルター・キング(元サックス兼バンマス)は一時的でなくホントに抜けてしまったのね。
 さていよいよ。メルビン・ジャクソン(サックス兼イントロデューサ)のいつもながらの軽快な紹介で、御大登場。しかし、周囲をなんと4人以上のスタッフが囲んでいる。何故に?それはステージ段差を登る際に、あの巨体が少し揺らいだのを見て理解できた。御大、少々腰にきたか。ステージ中央に立ち、いつもどおり颯爽とルシール(B.B.のギターの愛称)を叫ばせるまではよかった。しかし1曲目"Let The Good Times Roll"の途中で、彼の声がいつもよりこもってかすれ気味であるのが、聞いていて明らかになった。「やられたか。ああ、神様!」この微妙な変化はマニアなら気づいただろうが、一般客にはちょっとわからないだろう。こんな状態でもちゃんと並以上の声は出ているのだから。
 体調の不良は次の"Why I Sing The Blues"で目に見えて明らかになる。2曲目にいきなりこのアップテンポな名曲を持ってきたは感動だが、早くもイスが出されて、ステージ上は御大が座したままプレイをする体制に変わっていった。96年以降途中のバラッド・メドレーから座することはあってもこんな早くからはなかった。3・4曲目の途中、バック演奏の時にはタオルを口に当てがって、イスから転げ落ちてしまうのではないかと心配になるくらい身体を後ろにそらして大きく咳き込む。あんな苦しそうなB.B.を見たことないので、余計心配になる。
 脳裏に色々な思いが浮かぶ。「福岡で何があったかは知らないが、ブルーノートの連中はこの大事な客人を丁重に扱っているのか?3週間も働かせるのに健康管理がなってないじゃねぇか!」正直言って正気で耳を傾けてる状況になってない自分がそこにいて沈痛な表情しかできない。「今日はもういいよ、無理しないで早めに切り上げてくれ、頼む!」。そう願う中、いつもの〆曲"The Thrill Is Gone"が始まる。そうか、終わってくれるんだ。でも熱演だったよ、B.B.。ありがとう...しかし終わりを継げるメンバーと自己紹介がなかなか始まらない。そうこうしてるうちに曲もごく普通の形で終わる。
 まだ続く?そうバンドは続けた。ホーンが一旦ステージを去り、5人編成となったバンドは"Blues Boys Tune"で幕を開けるジャム・セッションへなだれ込んで行った。御大は声を温存し、ギタープレイに集中する。「ルシール」が彼の代わりに唄ってくれている...正確には御大が弾いているのだが、まるで自分で具合の悪いB.B.をサポートするかのように「唄っている」。バック陣のプレイもこれまで見たこともないくらい気迫がこもっている。相変わらず御大は自分の具合の悪さを見せまいとして、いろいろなフレーズを挿入しながら客を楽しませようとする。最後の声を振り絞って唄う"Please Accept My Love"、定番"Rock Me Baby"を経て、ショウは幕を閉じた。退場際にこちらから手を差し出して握手をしてもらったものの、3年前とは比べようもないくらい非力で、掌も小さく感じられた。その目は心ここにあらずといった目で、握手をしている当人でなく、他の人に話し掛けていた。
 彼の優しさに触れる時、いつも俺は涙が零れそうなくらいの感動を覚える。結局100%の力を出せたとは言えなかった。でもエンタティナーとしての底力、高い金を支払って見に来た観客への彼なりの配慮、プロ根性を垣間見たような気がする。彼の体調が一刻も早く良くなるよう祈らずにはいられない。

 2月2日
 会場ギリギリに行ったので入場番号が遅く、最後方・高イス席で観る。B.B.、昨日よりは体調良くなっているものの、全快とは言い難い。口調にまだ重々しさが残ってる。この人、MCは全回とも同じこと言うのだが、この日は「モウイッカイ!」の掛け合いがなかった。それどころの体調じゃないって?メルビンのサックスを捉えるマイクが途中トラブった。不愉快な雑音。まだ複雑な心境でしかステージを観れない自分。ここで目先を変えよう。今回、大活躍かな?というのがドラムスのケイラプ・エンフリーJr.時には軽快なビート、時には爆発せんようなパワーでとにかく叩きまくる。若干ウルセーぞ、ここブルーノートでわ。でも、"Blues Boys Tune"のラストのを聞くと「この人、最高!ベスト・ドラマー!」と思わず唸らずにはいられない。セットリストは予想どおり、最新作"Blues On The Bayou"からが多かった...というよりも最新作が「B.B.の最近のライブそのもの」なのだ。まだ未聴の人は是非買って聴いてみてほしい、たとえMCA時代、70年代以降の彼が嫌いだとしても。曲はもちろんのこと、B.B.自ら書くライナーノーツの内容は感動的である(訳が面倒なら日本盤を買うこと)。
 ちなみに今日、聞いた事は確かにあるんだが、いままで思い出せなかった1曲のタイトルがやっとわかった。"Paying The Cost To Be The Boss"。こんな有名な曲、なんでわかんなかったって?だって元曲の3倍のスピードでやられちゃねぇ(笑)。

 2月3日
 B.B.を初めて観る友人のためになるべくいい席をと思い、半休(いや正月休みの残り^_^;;)を取って整理券を取りに14:30から並ぶ。だって初めてにしてはあまりにもコストパフォーマンスの悪い公演に付合わせちゃったからせめてもの償い(笑)。それでも前には平日だというのにいっぱい人が並んでいて(2公演分)、30分待って19番とは...そういうものなのね。結局初日の1つ後ろのテーブルだった。それでも間近だったとは言えよう。通路沿いだったからいやでも御大に触れられるし。
 さて、今日のB.B.は?おおぅ!風邪が直っている?いい感じでスタートしたぞ。この2日間とは大違いで、声は通るわ、ギターは泣かすわ、その貫禄を十分に見せつける。今回は体調のせいで終始座っての演奏だが、この人、楽な姿勢だとギターを止むことなく弾く人だったのね。とにかくバックのソロの合間にもいろいろなフレーズでちょっかいを出す。今回は立ち姿があまり拝めないのが残念だと思っていたが、こーゆーことになるなら悪くないな。
 大量に汗をかく御大はいつもブルーノートのタオルを使って演奏の合間に拭うが、この日は最前の女性がハンカチを差し出したのに感激して、それを使う。でも彼の汗はちっちゃなハンドタオルでは拭き取れず、やはり大判を使おうとする。観客笑い。でも優しいB.B.、ご婦人を悲しませまいと、なるべく使うようにする。こういったコミュニケーションがステージを暖かくするし、彼の人となりを量り知る重要な要素ともいえる。
 総じて本来の彼らしさが発揮されたとてもいいステージが滞りなく終了した。感激のあまり、終演後友人とともに外で御大が出てくるのを待つ。他のメンバーはそそくさと専用バンに乗って会場を出て行ったが、御大はなかなか出てこない。でも10人ぐらいの人だかりが今か今かと待っている。そこへブルーノートの黒服チーフ・マネージャらしき人登場。髭を貯えているが優しい感じの人。実は3年前に行った時には普通のウェイターで、俺が「ギネス」と頼んでいるのに「いいです」と聞き違えて「それじゃ困るんですが」と問答したことがあったのでよく覚えていた(笑)。その人が説明する。「B.B.は風邪をひいているので早く戻してあげたい。この寒空で皆が待っているの見たら、B.B.はサインをしてあげなければならないと思うでしょう。あの人のことだから。あの人はそういう人なんです。」そういって皆に申し訳ないがお引き取り願うよう丁寧に深く頭を下げる。説得にも名ゼリフというのがあるとしたらこれぞ秀逸だ。特に風邪をひいてることを知っている俺にとっては深く胸打たれた。こういう周囲の気配りがきっと彼の体調が回復していった一要因なんだろう。アーティストにちゃんとした配慮がされていることがわかって、初日におぼえたブルーノートへの怒りはすっかり消えた。
 俺も浮かれててたが、確かにこの寒い中でそんなことはできない。俺たちをはじめ、他の人も納得して用意してある車から離れる。でも遠目でもいいから会場を出る姿を見届けたいと、みんなが通りの手前で待つ。しばらくしてやっと御大が出てきた。二人の「分らず屋」がそれでも食い下がっていったが、俺はその他の「良識ある人達」と一緒に彼の車を見送った。U2の映画「魂の叫び」の中で着ていたような茶色の皮ジャンにベレー帽という姿がちらっと見えただけだがそれでも良かった。車中に聞こえるかわからないというのに皆が拍手をする。B.B.は車の中から手を振って応えてくれた。外気は殊のほか寒かったが、心は暖かくなった夜だった。

 2月4日
 うーむ、他社に任せている個所で殊のほかスケジュールが遅れていた仕事がようやく動き出そうとしている。よって今日は徹夜。勿論B.B.は観逃さない。俺ってこういうケース多い。会場で友人に会ってもなかなか話す時間がないのも悲しいが。そうと決めたら火曜よりは良い席GETしようとして早目に会場へと向かう。そしたらB.B.の度真ん前の4テーブル目。VIP用に取ってあった5人分席の向かいに入れてもらった。ただし近いけど観にくい位置ではあった。急に割り入ったので後ろの人にも気遣いして、変な格好で観ようとするので首がねじれて痛い。悲しいかな、今日はソフトドリンクにして素面で観る。
 御大、すっかり元気になったようで、機嫌もいい。オープニングの"Let The Good Times Roll"ではすぐに唄に入らず、余計にギターを弾きまくる。続く歌声はこれまで風邪をひいていたなんてことが感じられないくらい、よく通った声だった。席が近すぎて、前の人の頭と頭の間から彼の顔が見える程度で、殆ど手元のギターが見えなかった。だから顔だけ見てた。彼の表情豊かな顔を見ているのが好きだから。それにその表情を見ていれば「ルシールをどんな手を使ってイカセてるか」はだいたい見当が付く。ギタープレイにも相当熱がこもっている。すべてにおいてノリにノッているのが感じられる。そう、感じるのは気迫だ。ショウの途中・バックの演奏中には決まって観客へのピック投げ等があるはずだが、今日はそれほど遊んでいない。勿論、彼なりのわかりやすい英語でのコミュニケーションは毎回同様あったりはしたが、かなり真剣だということがわかる。凄いよ、B.B.!目の前の「ブルーズの神様」は風邪をも屈服させるほどのパワーの持ち主だ。いつもの「歳を感じさせない雄姿」がそこにあった。
 終盤インスト3曲目ではいつもの「聖者の行進」前に一旦終わりかけて、再度激しく「聖者の行進」をひきまくる。"Please Accept My Love"も見事な唄いっぷり。どの日よりもわずかばかり(時間にして5分ほど)長いショウとなった。大盛況・まさに「王者復活」といったところか?今週中ではベストの、否、本来の彼の良さが滲みでたようなステージに納得する俺であった。まぁ、全日行く俺も俺だが、価値観は人それぞれで、この1日が体験できただけでも大枚は無駄ではなかったと思う。終わって目の前の席のVIP達が招待主に「いい席で観れて、ピックまで拾えて」と感謝していたが、この夜最も感謝されるべきはB.B.その人なのである。表に出ると、わずかだったが雪がちらつきはじめていた。このまま調子良くいってもらいたいものだ。

 2月5日
 やはり土曜のチケットは入手困難と判って、残念ながら俺にとって今年最後のB.B.となる(かはわからねぇな、2度来てもおかしくない。今回は最後)。しかも終わったらまた徹夜仕事である、トホホ。バンドのオープニング曲は今回は初めての「いつもの曲」。最後の最後に「お決まりの曲」が聴けてホッとする。でも2曲目はいままで聴いたことのないマイナー調のジャズチューン。ちょっと暗くなりすぎちゃいはしまいか?
 早くもスタンディングオベーションの中、御大登場。若干また具合を悪くしてるようだった。途中何回か鼻をかむシーンがあった。俺もかかったから、峠を越えた後のしばらく鼻がグズる頃だってのはわかる。でも最初の2日間に比べたら全然声も出ている。彼は歳の近いこともあってか、レオンとトニーにはよく話しかけてジャレ合う。御大自らが楽しんでいる様子が伺える。
 今日の客は最初は良かったが、2,3曲もすると以外に大人しくなってしまった。MCの掛け合いにも余り応えようとはしなかった。後半でインストを1曲とばして、"Please Accept My Love"のイントロを弾いてしまうが、すぐに「間違えた」ことに気づく。「もっと聞きたい?」観客に問いかけ、歓声を浴びながら本来のインストに戻る。うまいごまかし方。途中で「ギャー」と悲鳴にも似た絶叫をするヤツもいたが、それはそれでよかろう。ブルーズがまだ黒人だけのものだった頃の、かつての名ライブ盤達の雰囲気はそんなものだから。
 その他は問題もなく、滞りなくショウは終わった。個人的感想では昨晩のショウに勝るものではなかったが、安定した、納得のいくショウであることには違いない。土曜がどういう模様になったか、また残す大阪がどのようになるかは今のところわからない。でも彼のこと、彼らのことだから、決して損はさせない素晴らしい好演を行ってくれるに違いない。心を込めて「ありがとう」を言いたい。そして又の来日を切に願うのであった。

セットリスト(全日共通)

  1. Let The Good Times Roll
  2. Why I Thing The Blues
  3. I'll Survive
  4. Bad Case Of Love
  5. Darlin' You Know I Love You (Instrumental)
  6. Paying The Cost To Be The Boss
  7. The Thrill Is Gone
  8. Blues Boys Tune (Instrumental)
  9. (he called) B.B. King Blues (Instrumental)
  10. Instrumental Jam incl. Whole Lotta Love, When The Saints Go Marchin' In etc.
  11. Please Accept My Love
  12. Rock Me Baby - Shake It Up And Go

1998/03 ブルーノート東京 人生の修羅場パート2中だった為、気づいたのが最終公演がまさに終わった時刻だった....

ジャパン・ブルーズ・カーニバル ’97
 1997/05/20 ON AIR EAST(単独公演)
 1997/05/22 クラブチッタ川崎(vs.バディ・ガイ)
 1997/05/24 日比谷野外音楽堂(1日目トリ)

 ライブも5日続くと(これはB.B.の日程のみ。実際は間にバディの公演が入っている)結構カラダにキツイ。さてセットリストはよく覚えていない。なぜなら3公演でそれぞれ曲目を変えられたから(爆)。こうなるとさすがの俺も記憶できないぞ。逆にこういう異なるフォーマットを繰り出すB.B.も珍しいといえまいか?未見だった"Everyday I Have The Blues"なんてのも聴けたりして、感動的だった。メンバーから長年バンマスだったウォルター・キング(サックス)が抜け、ジェームズ・”シェイキン・ブギー”・ボーデンが代わりを務めたのは少し違和感があった。だってちょっと怖いぞ、彼。ウソ、あの表情で彼のキャラが立っていて、紹介のお決まりシーンで盛りあがるのだからいいのだ。楽器の代替の方はサックスでなく、スタンリー・アバナシーが加わりトランペットが2本になった。
 バディとの2部構成およびジョイントは日本ではこういうジャムがめったにお目にかかれないので感動もひとしお。ただし、観に来ていた客がみんなB.B.のファンだったのか、第1部が異様な静けさだった。前座ぢゃないぞ、慇懃無礼な(俺はバディのステージの大ファンでもある)。
 そして本編の1日目。この日のチケットも予約では取れなかったので行くつもりではなかったが、前日公演でどうしても行きたくなり、立ち見席をGET。B.B.が始まってあいにく雨に見舞われた。レインコートを伝わる雨のしずくがジーンズの足元に滴り落ちて濡らす。見る側にとって好条件だったとはいえない。そんな客に対してB.B.は通訳を介して感謝の言葉を投げかけて下さった。「冷たい雨の中、われわれの音楽を愛してくれて、どうもありがとう。」彼の優しさに触れる瞬間はいつも涙がこぼれるくらいの感動が背筋を走る。こんなライブをあと何回経験できるんだろう?
1996/05/21・22・24・25 ブルーノート東京(20は別アーティストのため、23は風邪で欠席)
 細かいことはあまりよく覚えていない。でも、当時のブルーノートはとても小さく、そんな狭いステージで大の大人9人(デブ2人含む...失礼!)が犇めき合っての目の前でのプレイに感激した。連日安定したプレイで、特に目立った日はなかった。 目撃した有名人−(ふんぞり返って飲んでた)世良正則・鮫島秀樹と多分松浦喜博(いわゆるツイスト。後者2人はこの1ヶ月後にSONS OF SOULとしてここでライブを行っている)・マキシ・プリースト...って感想じゃないやんけ!
 なにしろこの直前の別アーティスト(ボン・ジョビの東阪公演だよん。悪いかよん。)を含めて「9日間連日ライブ通い」という異例の事態だったので、体を壊すのは必至だよな。こん時は直接予約ではなく、ぴあ経由で前払いだったから金銭的には損をしたけど、そんなのわ全然気にはしない。たしかにブルーズのような大衆音楽はライブハウスやオープンスタジアムで聴くほうがベターであって、こんなオシャレな場所でプレイされるのにはいささか疑問の念があるが、「相応しい風格」を持ち合わせたB.B.ならではという面もあるから大目に許す。

セットリスト(全日共通)

  1. Let The Good Times Roll
  2. Chains Of Love
  3. When It All Comes Down (I'll Still Be Around)
  4. Darlin' You Know I Love You (Instrumental)
  5. Paying The Cost To Be The Boss
  6. We're Gonna Make It
  7. Understand - Nitelife - Ain't Nobody Business
  8. Why I Thing The Blues
  9. Blues Boys Tune (Instrumental)
  10. Rock Me Baby
  11. Guess Who
  12. The Thrill Is Gone

1994/05    ジャパン・ブルーズ・カーニバル ’94 本編はチケ入手に失敗し見逃す
1994/05/20 クラブ・クアトロ(19:00/21:00)
 2ステージ両方とも観た。こういう興行の場合、時間の制約もあって2回公演だと演奏時間が違うということも知った。当然ある程度時間に制約のないセカンドステージの方が長いわけで、良かった(この時はセットリストすら若干違いがみられた)。トニー・コールマン(パーカッション)がメンバーに参入。この年から御大、さすがに腰が弱くなったのか、途中から座してのプレイとなる。ホント言うとライブハウスの立ち見だとこれはちょっと見えなくてキツイのだが致し方あるまい。何よりも健康第一なのである、彼の場合わ。
セットリスト
19:00
  1. Let The Good Times Roll
  2. Chains Of Love
  3. Playin' With My Friends
  4. Nitelife
  5. We're Gonna Make It
  6. Understand
  7. Whole Lotta Love
  8. Sweet Little Angel
  9. Blues Boys Tune
  10. Rock Me Baby
  11. The Thrill Is Gone
21:00
  1. Let The Good Times Roll
  2. Stormy Monday Blues
  3. Caldonia
  4. Nitelife
  5. Playin' With My Friends
  6. We're Gonna Make It
  7. Understand
  8. Why I Sing The Blues
  9. Sweet Little Angel
  10. Whole Lotta Love
  11. Rock Me Baby
  12. Please Accept My Love
  13. The Thrill Is Gone
    Encore
  14. When Love Comes To Town

1992〜1993年は人生の修羅場にいた為、来日したこと自体よく知らない。たしかレイ・チャールズとのダブルヘッダーなんかもあったよな?
 でも金銭的にはまだバブリーだったので年末に一気に全マテリアルを揃える。2,3店でブルーズCDだけを40枚づつ買うなんて強力なこともしたよな、CDラックも増えた(爆)。オイオイどこが修羅場ぢゃ(今だから苦笑)。でもこれでライブで演奏される曲がだいたいわかるようになる。

1991/01 クラブチッタ川崎 2回
        五反田ゆうぽおと 1回(1回は風邪で欠席)
 単独ステージを初めて観るチャンスがやってきた。しかも一発目はHR/HMの殿堂(勝手に付けるな)、通いなれたクラブチッタでである。
 まずはメンバーの演奏が始まる。ふーん、こーゆー音楽はこんな前振りがあるんだなぁ。でも2曲じゃ飽きちゃうよぉ。早く出てこーぃ!
 2曲目のスロー・チューンから一転する軽快なリズム、そしてメルビン・ジャクソン(サックス)が「レディス・アンド・ジェントルメン!(中略)ミスタ〜、ビィ〜、ビィ〜、キ〜ング!」と独特な口調で御大の登場を知らせる。巨体を揺らせながら現れたB.B.は、手渡された愛器ルシール(ギブソンES335。巨大なギターだがB.B.の肩にかかるととても小さく見える)を肩にかけ、軽くキスをする。そして最初の弾きまくり。いやいや壮観である。これが世界の頂点に立つブルーズの神様か(この1ヶ月前にエリック・クラプトンを4回観ているが、なんか比じゃないぞ)。かっこ良すぎる。
 彼は拍子をとるのに片方の手の甲にもう片方の掌をぶつけて音を出す、「ペチ・ペチ」と。友人との間では今でもB.B.を表わすのにこのしぐさを用いる。またこの人、不器用なのかそうでないのか知らないが、唄う時はギターを弾かず、ギターを弾いている時は唄わない。それがはっきりしている。だから両方が半端で終わるようなことが絶対にない。どちらにも100%の力が注がれている。その光景はまるで2人の人間が互いに語り合いかけているかのよう。そこが、彼のギターが「ルシール」という名前を持った、「もう一人の重要なバンドメンバー」たることを物語っているのかもしれない。
 この時まで持っていたCDは前述のベスト盤だけで大して勉強していなかったが、聴いていて非常に楽しい。そう「楽しい」のである。この時まで−正確にはホワイト・ブルーズを聞いていた頃まで−、ブルーズは名前そのまま「哀しみを歌った音楽」とばかり思っていた。でも実際B.B.のプレイ、そしてボディ・ランゲージを観ていると楽しかったり、優しい気分になれるのだ。あらゆる感情を封じ込めた、心を豊かにしてくれる音楽、それがブルーズ。勿論、すべてのブルーズに当てはまるものでもないのかもしれないし、これがB.B.の持つ個性特有のものともいえるが、白人が模倣する「型」だけに囚われすぎて、何か勘違いをしていた自分に気づく。
 そしてバック・メンバーの実力も凄い。しかも一人一人が礼儀正しい。御大からソロを投げかけられ、そして終わると丁寧にB.B.に挨拶をする(特にベースの”マイティ”・マイケル・ドースター)。そこでB.B.は観客に拍手を促す手振り。ちょっと恐い顔のジェームズ・ボーデン(トランペット)もB.B.にかかるやいなや、ブギーでシェイクする「愉快な兄ちゃん」になってしまう。バンマスの「非常に気が効く男」ウォルター・キング(サックス)を中心として、ステージ上の誰もが互いに敬意を持ちつつ、それぞれの役割を果たす。基本的なことだが重要なことである。また観客とのふれあいも彼のライブでは大切だ。最後にメルビンが「キング・オブ・ザ・ブルーズ、ミスタ〜、ビィ〜、ビィ〜、キ〜ング!」と連呼する中、「儀式」ともいうべき、ラスト曲でのピック・ネックレス投げまくり、そして差し出されるLPやCDへのサインを嫌な顔せずこなす。こんな親切丁寧なアーティストもいるんだなぁ。
 初めてながら十二分にその魅力を満喫できた。いや、誰をも満足させるミュージシャンズ・ミュージシャン、それがB.B.なのだ。
 最後に、今でも忘れられないで思い起こせる素晴らしいシーンがあった。チッタ2日目のアンコール。会場に2歳か3歳の小さな女の子を連れてたお母さんがいた。おんぶされたその娘をみて、「この曲を君に捧げよう」と言って"Guess Who"をプレイし始める。2番の歌詞をハミング(スキャット)で唄う。「こんなの初めてだ」。御大自らがそう語るように、このバラッドがこのショウで特に秀逸なものに感じられた。「B.B.の曲で一番好きな曲は?」と尋ねられたら、私は真っ先に"Guess Who"を挙げる。この時受けた感動は一生忘れない。後日この模様は衛星放送(WOWOW)で放映されたが、このビデオを私は「宝物」として今も大事にしている。

参考セットリスト(1/15分のWOWOWオンエアより。実際はもっと曲数あり)

  1. Let The Good Times Roll
  2. Woke Up This Morning
  3. Darlin' You Know I Love You (Instrumental)
  4. Why I Thing The Blues (Instrumental)
  5. Early In The Morning
  6. Rock Me Baby
  7. Ain't Nobody Business
  8. The Thrill Is Gone
  9. When Love Comes To Town
  10. Guess Who

1990/08 中野サンプラザ(日本人アーティスト達とのセッション)は仕事の関係で見逃した

1989/11 東京ドーム(U2のスペシャル・ゲストとして)
 ヘビメタファンである俺がB.B.の名前を知ったのはデビッド・カヴァデールが敬愛するアーティストとしてだが、当時の俺はブルーズといっても、まだジョニー・ウィンターやスティーヴィー・レイ等のホワイト・ブルーズの域からイマイチ抜けきれないでいた。クラプトンもその一人。夜中の番組で「B.B.&フレンズ」というジャムセッション(ビデオ化もされてる)があって、多分それがB.B.を初めて観たことになるのだが、それはそれは「違う角度から」眺めてたりしてた。
 そのB.B.が今度U2(当時最強のお気に入り。まだアイリッシュ魂を引き摺ってて、音楽的にはアメリカ南部音楽を取りこもうとしてた頃)とコラボって、しかもジョイント・ツアーを行うという。日本にもこの形でやってくる。これは見逃せない。すぐさま東京ドームを3日間キープ。それまで務めてた会社を辞めた直後のクソ忙しい時にだ。
 ただし、最優先事項は何をおいてもU2だったので、オープニングアクトとしての演奏については何も覚えていない、正直言うと。U2本編ラストでの競演では"When Love Come To Town"以外にもう1曲やった。たしかU2自身の"Love Rescue Me"だったよな?
 直前にベスト盤を1枚買って「聞いた」だけだし、それにドームの2階席じゃ顔もまともに見れん(たしかU2用の巨大プロジェクトモニターも使わせてもらえなかったようだった気が)。それでも、十二分に敬意を払って紹介するボノの姿に、まだディテールを掴みきっていなかったこの御大を間近で観たいと思わせるのにそう時間はかからなかった。

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